あぶら取り紙で体脂肪率を下げる
【はじめに】
太った。
こんな食生活をしていたらもしかして太るんじゃないかな、いや太らないだろ、30代に突入したと言ってもなんだかんだ日本の全人口の上位20%くらいの若さだし、と油断して毎日大きなおにぎりと揚げ物ばかり食べていたら完全に太ってしまった。日本が高齢化社会なのを忘れていた。
体重増加もさることながら体脂肪率の上昇が目覚ましく、春先にあった会社の健康診断でも内臓脂肪過多を指摘されている。
健康的に体脂肪を燃焼させるためには運動が一番。しかし平日はデスクワーク、休日はステイホームで、慢性的な運動不足を解消するのは難しい。
できるなら、食事制限もなく、運動もせず、とにかく体脂肪率を楽に減らしたい。
ピンポイントで体の油分だけを取り除く、そんな簡単で便利なダイエットアイテムがあれば。
体の脂肪だけを取り除く……
油分だけを……
体脂肪、あぶら取り紙を使って減らすのはどうだろう。
これが、今回の記事の趣旨である。
【事前準備】
あぶらとり紙(あぶらとりがみ)は、顔の皮脂などを取るために用いる、化粧用の和紙。もともとは金箔の製造時に用いる箔打紙(雁皮紙)の再利用品である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキペディアから引用するまでもなく、あぶら取り紙は油分を吸い取ってくれる紙だ。これを一定期間恒常的に用いることで、体からの油分排出の手助けをする。食事を制限して脂質の摂取量を意図して減らさずとも、排出量だけ平時を上回るペースで増やせば、その分身体に蓄積される油分は減っていく(=体脂肪率が下がる)のではないか、という寸法だ。
イメージ
今回の検証を行うに当たって、2名の有識者から事前に意見を聞いた。
1人目は皮膚科のお医者さん。持病で定期的に検診を受けている先生に、一定期間とは言えあぶら取り紙をめちゃくちゃ使うことについて注意点を尋ねた。
体質的に顔が赤くなりがちな私もあぶら取り紙を使った直後は赤みが引いていい感じなんですが、いっぱい使うのは大丈夫ですか?
使用については特に… 体に悪いものではないので。頻度を上げるならあんまり擦り過ぎないようにした方がいいとは思います。
あぶら取り紙で体脂肪率は減りますか?
(笑)
笑われました。
2人目はお母さん。こういうのってなんだかんだお母さんが一番頼りになるからね。
というわけなんだけど。
そんなの取れば取るほどたくさん湧いて後悔するだけだからやめときなさい!
止められました。
まあお母さんって大抵こういうのに反対してくるから。制止に従うと検証が進まないので、今回は一旦無視することにする。
【検証方法】
・検証期間は1ヶ月。原則毎日あぶら取り紙を使用し、体から出来るだけ多くの油分を除去する。
・1週間に一度の休紙日(あぶら取り紙を使用しない日)に体重と体脂肪率を計測、記録していく。
・1ヵ月後に体脂肪率が落ちていれば検証成功。
・使用するあぶら取り紙はあのギャツビーでNo.1の吸収力を誇るこちら。パッケージ左上に踊る「最強力!」が頼もしい。
【検証1週目】
検証開始にあたり、基準値として素の状態での体重と体脂肪率を計測する。我が家の体重計は皮下脂肪も測定できるので、併せてそちらも記載していく。
10月25日
体重76.7kg / 体脂肪率22.9% / 皮下脂肪率20.6%
私の身長に対して、標準体重は69.7kgらしいので丁度7kgオーバーだ。測定日の夕飯はカレーで、たくさんおかわりをしたのが仇となってしまった。
体脂肪率、皮下脂肪率は共に20%超。成人男性でこの数字は「やや肥満」に該当するとのこと。1ヶ月後には健康的な値まで下がっていることを期待したい。
それでは、検証開始。
日付 使用時間 使用枚数
10月26日 18時00分 2枚
10月27日 15時30分 2枚
10月28日 14時26分 2枚
10月29日 16時47分 2枚(1.5)
10月30日 14時35分 2枚(1.5)
10月31日 15時03分 2枚
…
はい。
あっという間に1週間である。
基本的にあぶら取り紙を使うだけなので検証過程は数字の羅列で終わってしまう。ひとまず1週目は1日1回、2枚までの使用で留めておいた。母に言われた言葉が地味に効いている部分がある。
29日、30日の(1.5)は、あぶら取り紙自体は2枚使ったが、顔全体の油を除去しても1枚と半分くらいの面積で十分だった、という意味だ。
検証4日目で早くも排出する脂肪が減って来たのかと思ったが、6日目は普通に2枚まるまる使い切ったので、よく分からないがそういうタイミングだったのだろう。
1週間経過 体重測定
11月1日
体重75.1kg / 体脂肪率22.2% / 皮下脂肪率20.0%
《検証開始より》
体重-1.6kg / 体脂肪率-0.7% / 皮下脂肪率-0.6%
減っている…?
体重についてはカレーの影響が少なからずあったと思うが、体脂肪率が普通に減っている。
まさか1日2枚のあぶら取り紙でいきなりこんなに効果が出るとは。
爆売れダイエット本を出版する未来が見えて来た。
【検証2週目】
日付 使用時間 使用枚数
11月2日 18時44分 3枚
11月3日 15時18分 2枚
11月4日 18時45分 2枚
11月5日 0枚
11月6日 21時28分 3枚
11月7日 18時10分 3枚
前週の最大2枚から一歩進んで、必要とあれば3枚目を使ってみることにした。
5日は仕事が忙しくあぶら取り紙のことなんてすっかり忘れてしまった。6日も引き続きかなり忙しかったが、帰宅後に意地の3枚消費。その後すぐ風呂に入ったのであまり意味はなかったかもしれない。
2週間経過 体重測定
11月8日
体重75.8kg / 体脂肪率22.2% / 皮下脂肪率20.0%
《検証開始より》
体重-0.9kg / 体脂肪率-0.7% / 皮下脂肪率-0.6%
前回測定から体脂肪率は全く変化なし。コンマ1%まで変わってないのは珍しいのではないだろうか。体重のみが僅かに増加した。
日に3枚使用することもあったが、週間の使用総数で言うと12枚→13枚になっただけなので、そもそもそれほど変化が見込めなかった可能性がある。どんどん行こう。
【検証3週目】
11月9日
10時50分 1枚 / 15時20分 1枚 / 18時13分 2枚
11月10日 12時50分 1枚 / 15時24分 2枚
11月11日 15時28分 2枚
11月12日 18時22分 2枚
11月13日 0枚
11月14日 15時22分 2枚 / 18時15分 2枚(1.5)
13日は再びの失念。この週から日に2回以上のペースでの使用を開始した。一度完全に拭い去っても時間が経てばわりと普通に顔へ油分が戻ってくる。
そんなの取れば取るほどたくさん湧いて後悔するだけだからやめときなさい!
どこからか母の声が聞こえる。でも、もう後戻りは出来ないんだ。
3週間経過 体重測定
11月15日
体重74.6kg / 体脂肪率22.7% / 皮下脂肪率20.6%
《検証開始より》
体重-2.1kg / 体脂肪率-0.2% / 皮下脂肪率±0.0%
意図せず体重が減った。意識的に食事量を減らしたわけではないが、昼食を食べ損ねたり雑に菓子パンで済ませたりが重なったせいだと思われる。体重が減っても蓄積された脂肪はそのままのため、相対的に体を占める脂肪の割合が増えた形になったのではないかと思う。体脂肪率を減らしたいこちらとしては不本意な数値である。
【検証4週目】
11月16日 9時56分 1枚 / 17時35分 2枚
11月17日 14時47分 2枚
11月18日 13時37分 2枚 / 16時50分 2枚
11月19日 11時40分 2枚(1.5)/ 18時5分 1枚
11月20日
7時53分 1枚 / 11時12分 2枚 / 14時58分 1枚
11月21日 11時45分 1枚
3週目の測定結果を受け、なり振り構わず気付いたら使うという方針を取った結果、過去最高の週間17枚を記録した。
日に3度4枚フルで使った日もあり、かなり高頻度で油分を除去したように思う。
4週間経過 体重測定
11月22日
体重75.8kg / 体脂肪率21.4% / 皮下脂肪率19.2%
《検証開始より》
体重-0.9kg / 体脂肪率-1.5% / 皮下脂肪率-1.4%
嘘みたいに体脂肪率が減っている。
体重の増減が激しく±2kgくらいは誤差の範疇のようになっているが、体重増化による相対的な体脂肪率の減少ではなく、今週は全体的な減量になっているので、ダイエットとして機能している感じがある。検証の意図を考えると体重はそのままに体脂肪率だけ下がるのが理想的ではあるが、欲は言わないでおこう。
【そもそも】
検証開始から4週間を過ぎたところで、そもそも「あぶら取り紙1枚でどれくらいの油分を吸収できるのか」という根本的な疑問が浮かんで来た。そんなの最初から測っておけという諸兄のご指摘は甘んじて受け入れるとして、4週間経過時点、合計57枚のあぶら取り紙によって、これまでで一体何g、何kgの油を排出できたのか。興味が湧いてくるのは必然である。
湧いてくるといえば……
そんなの取れば取るほどたくさん湧いて後悔するだけだからやめときなさい!
【実測】
というわけで検証も残すところあと3日。Amazonにて0.01g単位で計量できる精密電子はかりを購入した。
かっこいい!
ここに、ひとまず開封したての真っさらなあぶら取り紙を1枚乗せてみる。
0.11g。
1枚ずつのブレや個体差を加味し、別の個体をいくつか計測したり、複数枚同時に乗せて計測してみた結果、このあぶら取り紙は1枚で約0.115gであると、おおよその見当がついた。
次に、このあぶら取り紙が油を含んだ場合の重さを測定する。
いつも通り普通に顔を拭っても良かったが、あぶら取り紙に吸われた状態とはいえおじさんのリアル皮脂の写真を一体誰が見たがるのかという思いもあり、今回は手の甲に薄くラードを塗って、それを拭うという妥協案を採用した。
擬似的に作り出した“使用後”の1枚を、早速精密はかりに乗せてみる。
0.16g。
すごい。ちゃんと重くなっている。
こちらも真っさらなときと同様に何度か試行してみたが、肌を拭うという形であれば、十分に油分を含ませたとしても重さは最大で約0.175gほどに落ち着くという結論に達した。
こうして測定した“使用後”と“使用前”の重量差が、1枚あたりの油分吸収量になる。
0.175−0.115=0.06。
あぶら取り紙1枚で吸収できる油分は、0.06g。
この4週間で使用したあぶら取り紙の枚数は先述した通り57枚。掛け算をしてみよう。
0.06×57=3.42。
つまり私はこの27日間で、3.42gもの脂肪分を、いつもより余計に体から排出できたわけである。
【最終週】
11月23日
10時2分 1枚 / 12時20分 1枚
14時15分 1枚 / 16時58分 1枚
11月24日 14時20分 2枚 / 16時5分2枚
11月25日 16時10分 2枚
最後の3日で10枚使用した。1ヶ月計67枚。
1枚あたりの正味の吸収油量の計算をしたいま、今更10枚増えたところで、という感じは否めないが、4週終了時点でのリードもあることだし、このまま有終の美を飾りたいところである。
最終週 体重測定
11月25日
体重75.4kg / 体脂肪率23.5% / 皮下脂肪率21.3%
《検証開始より》
体重-1.3kg / 体脂肪率+0.6% / 皮下脂肪率+0.7%
いや最後の最後で増えるんかい
もういいわ ありがとうございました
【おわりに】
というわけで、検証は失敗に終わった。
あぶら取り紙だけで体脂肪率を減らすのは不可能だったのだ。
だいたい57枚で3.42gって何だ。コカイン?
検証開始時点の体重76.7kgで、体脂肪率1%あたりの脂肪の重量を計算してみると
7670×0.01=76.7(g)。
今回、1ヶ月間毎日頑張ってあぶら取り紙で排出した油は4.02gだった。
成人男性の健康的な体脂肪率の目安は10〜19%とのことなので、22%から3%減らして19%にするとして、必要な削減量は
76.7×3=230.1(g)。
あぶら取り紙だけでこの脂肪分を全て吸い取るとすると
230.1÷0.06=3,835(枚)。
4,000枚のあぶら取り紙を一気に使えば、まだ可能性があるのかもしれない。
今回私は目標にたどり着けなかったが、この記事を目にした、まだ見ぬ未来のあぶら取り紙体脂肪カッターにこの数字を託そうと思う。
【結論】
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
次回「金箔入りのお酒を何升飲んだら胃の中に金の延べ棒ができるのか」でお会いしましょう。
さようなら。